「富岳」も「京」も身近になった!

世界最高峰の
スーパーコンピュータ
民間利用広がる

事業に生かし、圧倒的な競争力を得る企業が続々

2021年3月に本格稼働した日本のスーパーコンピュータ「富岳」が、世界のスーパーコンピュータ・ランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」と「Graph500」において、世界一を5期連続で更新している。気候変動、脱炭素化、サステナビリティといった困難な社会課題への対応を迫られる中、その課題解決や製品開発に「富岳」や「京」などのHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)を利用する企業が増えている。

その背景には、HPCの低コスト化が進展したことや、「富岳」の世界一の報道などでHPCの存在がより身近になってきたことなどがある。社内にHPCを使える専門家がいなくても、外部の専門家の支援を受けながら利用できるサービスや、希望する解析を丸ごと引き受けてくれるサービス「CaaS(コンピューティング・アズ・ア・サービス)」も出てきている。従来の知識や経験では解決できない課題に、HPCのパワーで挑もうとする企業は増える一方だ。

「もはやHPCによる解析なしに、
新製品の開発は考えられません」

と語るのは、川崎重工業 技術開発本部 技術研究所 機械システム研究部 特別主席研究員の川本英樹氏だ。

例えば、HPCによるシミュレーションを活用し、発電用ガスタービンの圧縮機内部の翼型をわずかに改善するだけで、年間の燃料コストが数千万円も削減できるという。開発者の経験やノウハウをすべて投入したうえで、HPCを使った流体解析により、その先にある未知の最適化に挑む。同社が2012年3月に発売した30MW級ガスタービン「L30A」は未だに世界一クラスのエネルギー効率を誇り、ロングセラー製品として同社の経営を支えている。

このようにHPCのパワーを活用し、競合他社が容易には真似できない製品やサービスを打ち立てれば、圧倒的な市場競争力を得られる。もちろん、ESGへの対応やサステナブル経営の課題にも効果的だ。

HPCを商用利用する敷居は年々下がり、多くの企業がHPCの恩恵を得られる時代に入った。製造業だけでなく、医療や物流、社会インフラなどの分野で活用が始まっている。大企業から中小企業まで、多くの注目を集めるようになった。

次ページからは、HPCの活用が経営に与える影響や効果、事例、課題、一般企業の利用を広げているサービスなどについて語られた、川崎重工と富士通のキーマンによる対談をレポートする。

【続きを読む】一般企業がHPCをツールとして活用し
経営に生かす時代がついに到来

事業に生かし、圧倒的な競争力を得る企業が続々

  • HPCで世界レベルの製品を開発
  • もはやHPCのない開発は考えられない
  • HPCの活用は企業競争力の源泉

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