ニューノーマル時代を勝ち抜くための、デジタルインフラの3要件とは

新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の事態は、社会や生活に甚大なダメージを与えました。多くの企業では様々な課題を乗り越えながら、事業の新たな発展を目指しています。今回は、コロナ禍で事業を継続・発展させるためには、システムにどのような要件が求められるのかについて、デジタル業界を長年取材してきた日経BPの2人の研究員の対談から探ります。

日経BP総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫 氏(写真左)、日経BP総合研究所 上席研究員大和田 尚孝 氏(写真右)

「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」

大和田:まず現在の企業が置かれた状況について整理したいと思います。改めていうことではないですが、新型コロナウイルス感染症により急速にいろいろなことが変化しました。この変化に対応するために、誰もが何かをしなくてはいけないと感じ、そして行動に移しています。

これは、米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)の発言でも確認できます。ナデラCEOは「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」と述べています。私自身も今年に入ってシステムに関して多くの問い合わせを受け、そして支援を行いました。

桔梗原:日本の労働生産性は主要先進7カ国中、最下位の状況が続いていますが、その大きな原因の一つがデジタル活用の遅れです。それはDX(デジタル・トランスフォーメーション)についても同様です。そんな中で新型コロナウイルス感染症が発生、いきなりビジネスの連続性が途切れました。企業活動におけるデジタルの重要性が改めて認識されたこともあり、流石に変わらねばという危機感が出てきています。

「デジタル活用」を変革の道具として使う

桔梗原:企業が変わる有効な手段がデジタル活用です。これまでITは、主にコスト削減や効率化といった道具にしか、使われてこなかった。もちろん、効率性を求めるデジタル投資も必要ですが、それよりも製品・サービス開発の強化やAI活用による迅速な判断などビジネスモデルを変革する道具として積極的に利用する段階に来ているのだと感じています。

大和田:先日、一橋大学の伊藤邦雄名誉教授とお話しする機会があったのですが、ITは経営者から見ればコスト削減の道具でしかなかった。これからは、売り上げを伸ばすといった変革を起こす方向に使いはじめていく。そうなってくると、真の意味でのDXにつながっていくというのです。

桔梗原:積極的にDXを進めていた企業はコロナ禍においても、ダメージを最低限に抑えているという傾向もあるようです。たとえば、DXを成功させた企業として、真っ先に思い浮かぶウォルマート。アマゾン・エフェクトで多くの企業が破綻に追いやられましたが、その中でウォルマートが復調しているのは、まさにDXを実践したからです。デジタルを活用してトライアンドエラーを重ねながら、次々と新しい改革を実践しました。

大和田:日本ではトラスコ中山が挙げられます。同社は製造現場で必要となる間接材の卸売りをメイン業務としていますが、AIによる自動見積もり機能の開発で業務量の削減を実現するなどの新しい取り組みを実施しています。同社は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2020」のグランプリにも選ばれました。

桔梗原:日本経済新聞社がまとめた2020年度の設備投資動向調査によれば、企業のIT投資の計画額は前年度実績比15.8%増と大幅に増える見通しだそうです。やはりDXを加速させようという意向の表れだと見てよさそうです。

桔梗原:DXを加速させるためには、いくつかの要件があります。

ニューノーマル時代にシステムが満たすべき3つの要件とは?

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  • 「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」
  • 「デジタル活用」を変革の道具として使う
  • ニューノーマル時代のシステムが満たすべき3つの必要要件
  • システム構築の際にはハイブリッドがキーワードとなる
  • ゼロベースで業務やシステムを見直し、戦略とシステムをすり合わせる

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