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EUのブロックチェーンの技術者不足への対処法とは

Cengiz Kakil
富士通Track and Trust Solution Center ビジネスアナリスト

富士通ブロックチェーンイノベーションセンターのビジネスアナリストであるCengiz Kakilは「わずか1年でブロックチェーンへの投資額が5倍に急増したため、技術者不足が浮き彫りとなった」と述べています。ここでは、EUが最近立ち上げた、欧州企業が新技術のもたらすチャンスを最大限生かせるようにするプログラム「CHAISE」をご紹介します。

ブロックチェーン技術者の需要と供給の急激なミスマッチ

ブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT:Distributed Ledger Technology)の実用化がどこまで進むのか、多くの人が懸念を抱いていたましたが、2021年、その懸念は終わりを告げました。
KPMG社 のレポートによれば、2021年のブロックチェーンと仮想通貨への投資額は過去3年間の総額を上回り、2018年の82億ドル、2019年の56億ドル、2020年の55億ドルに対して、300億ドルにまで跳ね上がっています。

この投資の急増の結果、人材争奪戦が引き起こされました。他のデジタル技術に比べDLTはまだ比較的新しい分野です。そのため、相応しいスキルと経験を持つ人材の数は今なお需要に追い付いていません。2021年の投資額が2020年の5倍以上に増大したことから、資金力のあるスタートアップ企業と大企業の双方がまだ需要に追い付いていない人材市場で技術者確保を急いだため、人材不足が一段と逼迫しました。その結果、経営者は高いスキルを持つ人材不足に直面し、この分野の可能性を十分に生かしきれずにいます。

欧州のブロックチェーンで抱く理想

EUおよびその規制当局は、ブロックチェーンとDLTが従来の取引の在り方を変革することで経済と社会に恩恵をもたらす大きな可能性を秘めた重要なテクノロジーであることを、早い段階で見抜いていました。2015年以来、ブロックチェーンが引き起こす問題の調査と分析を続けています。その問題には、不正行為(主にマネーロンダリングと税金詐欺)が行われる可能性に加え、ブロックチェーンに対する理解の妨げになり得る課題(規制関連の課題)や、先述の投資額のギャップ(2021年まで)、そして何より、技術者不足が含まれます。

EUは2020年以降、「デジタルファイナンスパッケージ」や、「欧州デジタルアイデンティティの枠組みに関する提案」、「データ法の法案」などの規制関連イニシアチブを立ち上げてきました。こうした規制策定の目的は、例えばスマートコントラクトや暗号資産の法的安定性を高め、企業がいわゆる「規制のサンドボックス」においてブロックチェーンソリューションをテストできるようにし、イノベーションを促進することにあります。
並行して欧州委員会では、特に「Horizon Europe」プログラムと「AI・ブロックチェーン投資基金」を通じて資金調達と投資をすることで、欧州ブロックチェーンサービス基盤(EBSI)の拡大を進めています。 

欧州での技術者不足解消に向けたトレーニングプログラム

人材の不足についてEUは、グローバル競争のプレッシャー、教育現場と市場のつながりの弱さ、新たな労働市場で求められる要件に対する学校教育の反応の悪さ、に起因していると捉えています。
これらに対してEUが状況の理解を深めるために実施された調査「Study on skills mismatches in the European Blockchain sector」では、企業の過半数が「候補者がいない」あるいは「候補者が資格要件を十分に満たしていない」という、求人の問題を抱えていることが明らかとなりました。また、同調査結果では日進月歩のDLT環境では絶えずスキルのアップデートが求められ、国際ブロックチェーンスキルハブがトレーニングプログラムを提供することを推奨しています。また、企業が公式な教育訓練や資格認定をますます重視するようになっており、ブロックチェーンに関連するスキルを網羅するブロックチェーン教育者向け資格認定プログラムのニーズも高まってきています。

需要と供給のギャップを解消すべく、EUは2020年11月に教育施策として「CHAISE」イニシアチブを立ち上げました。これは4年間にわたるプロジェクトで、欧州の技術者不足解消に向けた戦略の策定を目的とするEUの「エラスムス・プラス(Erasmus+)」プログラムが支援しています。

同プロジェクトでは、デジタルスキルの説明と用語を統一し、既存のコンピテンシーや資格認定の枠組みに沿って、ブロックチェーンとDLTに関する認定トレーニングプログラムの開発と史上初の「ブロックチェーンスペシャリスト」という職種の開発を進めています。

錚々たるコンソーシアム参加企業の中で、富士通はCHAISEにインサイトを提供する一方で、世界トップクラスのブロックチェーンエキスパートとして、ブロックチェーン技術をその他のICTおよび非ICT領域へ適用するサービスを提供しています。同時にCHAISEコンソーシアムが重要な問題に対処できるよう、富士通は情報を提供しています。
絶えず浮上する問題には例えば、「この領域の高いスキルを持つ人材をどう定義するか」、「従業員にどのプロセスの知識が必要か」、「最も重要なプログラミング言語はどれか」、「ブロックチェーンに基づくシステムアーキテクチャをどのように設計するか」、「どの方法論が関連するか」、「どうすれば従業員が常に知識をアップデートできるか」などがあります。

同プロジェクトでは、革新的な5学期制の職業訓練教育(資格認定)プログラムを11種類のEU言語で開発しています。CHAISEカリキュラムには、ブロックチェーンに特化した技術的スキルに加え、問題解決、チームワーク、顧客中心の企業家精神といった現代の職場環境に欠かせない非技術的なスキルも含まれる予定です。さらに、このプロジェクトによって開発された学習教材はすべて、公開オンラインコース(MOOC)に整理統合されます。

この活動によって、CHAISEコンソーシアムに参加する富士通とパートナー企業は、EU諸国が適切なスキルを持った人材をより多く獲得でき、欧州がブロックチェーン導入の先頭に立てるよう支援していきます。お客様のビジネスモデル変革と喫緊のグローバルな課題の解決について富士通のDLT技術の実装事例の詳細は、下記、関連リンク「Fujitsu Distributed Ledger Technology (DLT)」をご覧ください。

*この記事は「The European Union’s response to blockchain skills shortages」の抄訳です。

著者プロフィールCengiz Kakilの写真

著者プロフィール
Cengiz Kakil

富士通Track and Trust Solution Center ビジネスアナリスト
Fujitsu Track and Trust Solution Centerのビジネスアナリストとして、ブロックチェーンによってビジネスモデルを変革できる理由やブロックチェーン技術をプロセスに実装する方法についてお客様を支援しています。

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