データドリブン経営ブログ
パーパスをもってエンタープライズブロックチェーンソリューションを構築すべき理由
Frederik De Breuck
富士通ベルギーCDO/CTO、Fujitsu Global Fujitsu Track and Trust Center長
レスポンシブルビジネス(注)に対するパーパス(存在意義)とコミットメントが、より持続可能な世界を作っていくことになり、安定したエコシステムを持つことがますます重要になってきています。
エンタープライズブロックチェーンと分散型台帳技術を利用すれば、利害関係者全員が同一の検証可能なデータをリアルタイムに確認できるようになり、サプライチェーン上で発生する問題や遅延をより早く解決できるようになります。本稿は、単なるテクノロジーの利用に関する話ではなく、テクノロジーを利用してセキュリティ、透明性、トレーサビリティ、ファイナリティ(決済完了性)をエコシステムに取り入れるアプローチをご紹介します。
富士通は、持続可能な開発目標(SDGs)が経済とビジネスの成長を実現する上で重要な基盤であり、「お客様と密接に連携し、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきたい」と考えています。
注:多様性を尊重した責任ある事業活動
市場と経済の力学は我々が直面しているさまざまな課題の対処法にどのように影響を及ぼすのか?
企業や社会の変革には膨大な事前検討と実際の行動に加え、想定可能な範囲のリスクは引き受けなければなりません。それは非常に険しい調整の道となりますが、企業の立場も個人の立場も関係なく、避けることはできません。
今日、市場と経済の力学の変化は、我々が調整し適応するより速く起こっています。私はこのような課題に適応するためのユニークで革新的なアプローチを実際にいくつも見てきており、そしてその活動に参画もしてきました。重要なことは、技術革新と変化に真に対応し、日々直面する新たな状況にスキルと役割を適応させるアプローチです。
ある大手ビールメーカーのサステナビリティ担当マネージャーとの最近の会話でもお客様も同じ状況に日々直面されていると伺いました。
私は最近、自社のビジネスのために最善を尽くすと同時に、あらゆる活動でパーパスを意識するようにしています。その結果、ビジネスの利益を追求しながら、「社会のためになること」をすることで不利益を被ることは何もない、ということに気づいたのです。シンプルですが、結局はそれが最終的なゴールなのだと思います。
変革を可能にした技術の一つが、データ、インサイト、意思決定モデリングへの取り組みをダイナミックに組み合わせたエンタープライズブロックチェーンと分散型台帳技術になります。
エコシステムが変動性や不安定性、脆弱性にさらされた場合でもデータの信頼性と透明性を確保するには?
企業のコンテキストにおけるブロックチェーンと分散型台帳技術は現在、新規構築でない限り、ビジネスエコシステムでのエンドツーエンドのソリューションではなく、補完的なプラットフォームであることが一般的です。
今日、不透明な、悪くすれば不安定にもなるグローバル経済や、変化が多く脆弱性のあるサプライチェーンにおいて、例えば安定したエコシステムを持つことが一段と重要になっています。個人も、企業も、関係者全員が同一のデータを確認していると確信できなければなりません。商品の生産地、ファイナリティ、パーパスステートメント(社会における存在意義)の正確さなどを信用する必要があるためです。
関係者全員で信用を維持することが最も重要になります。従来型のアプローチでは、特定の関係者が責任、アカウンタビリティ、リスクを一手に引き受け、また、そのために信用を得る必要がありますが、一元化された世界では簡単ではありません。
収集されたあらゆるデータとデータに基づく知識に対する信用を生み出し維持しようとすると、エコシステムの変化に対して問題が発生しがちです。そこにブロックチェーンの技術を活用することで、状況を大きく変化させることができます。
富士通は、「お客様と密接に連携し、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」ことを目標としています。これは、お客様と共に進んでいく中で、私たちの行動を一貫性をもって厳格に管理してくれます。持続可能な開発目標(SDGs)は、今後の経済とビジネスの成長を実現する上で重要な基盤であり、カスタマーエンゲージメントにも、お客様との対話にも欠かせない構成要素となります。
これにより私のチームは、会社の戦略の実現に向けて取り組むことができ、すべてとはいわないまでも、それを内外で交わす多くの会話に取り入れています。その強い信念とは、「ビジネスは社会に利益をもたらす力になり得る」というもので、「行動するコストよりも行動しないコストの方が上回ることが多いということが、自分たちの行動の原動力となる」と認識しています。しかもそれが利益をもたらすビジネスとなるのです。
これは私のチームに取り入れた強い信念の1つに当てはまります。「自覚して行動する。すべきことを知る。さらにその方法と理由も知る」というものです。その結果、パーパスと厳しく一貫性のある素早い実行を健全に組み合わせた変革的成長にお客様と取り組むことができます。
パーパスをもって物事を進めることで富士通はどのようにして独自の方法論とアプローチを確立したのか?
大局的に見て、パーパスを取り入れ、自分たちの行動に信念を持つことで、実用的な方法論を確立し、信頼性を高め、共感をよぶ多面的なアプローチを生み出すことができました。
ブロックチェーンと分散型台帳技術は、現実のお客様が抱える問題の解決を支援するための技術です。それらは今まさに我々の目の前で起きているテクノロジーの融合を加速させます。
TIME誌のCEOであり編集長でもあるEdward Felsenthal氏は「今やすべての企業がテック企業だ。ディスラプション(破壊的イノベーション)は始まったばかりだ」と述べています。私のチームはこの言葉に考えと行動が変わるほど刺激を受け、突き動かされました。エコシステムは、SDGsにそって適切な取り組みが行われることと同じくらい大切です。
飲料の原産地を追跡できる消費者向けアプリケーションが開発される一方で、サプライチェーン全体の効率性を改善することや、本来は情報が見えづらい複雑なエコシステムの中でより透明性の高い商品を扱えるようにするなど、それらを集約していくことが、新たなパーパスを私のチームに提供してくれ、適切な意思決定を行うためのエビデンスとインサイトを利害関係者に提供してくれます。私は、大半の人が「新たなパーパスを設定し、適切な意思決定をしたい」と考えると思っています。
最後にもう一つの教訓をお伝えします。あなたがこれから何をするかを説明することにあるのではなく、何かをより良くするために既に行ったことを説明すること、つまり実行にこそ真の価値があると考えています。
*この記事は「Why you should be Building Enterprise Blockchain Solutions with a Purpose」の抄訳です。
著者プロフィール
Frederik De Breuck
富士通ベルギー CDO(最高デジタル責任者)/CTO(最高技術責任者)、Fujitsu Global Fujitsu Track and Trust Center長
富士通ベルギーのCDO/CTOとして、従来型ビジネスをデジタル化することで成長と戦略的更新をより促進させる業務の総責任者の役割を果たしている。Fujitsu GlobalのFujitsu Track and Trust Centerの管理・運営も行っており、ブロックチェーン方式の分散型台帳ソリューションの開発と、スピーディーに企業に実装するためのイノベーティブな方法論確立にフォーカスしている。