富士通は 2040 年までに、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量のネットゼロを目指しています。目標達成のため 2024 年 10 月より、国内外のサプライヤー 12 社が参画する新たな取り組みを始めました。
取り組みでは、実データを用いた製品ごとの CO2 排出量(製品カーボンフットプリント; PCF)が使われます。各社が PCF を Fujitsu Uvance オファリング「ESG Management Platform」で計算し連携。その結果、従来の算出値より正確な排出量が可視化され、カーボンニュートラルに向けた具体的な施策立案につながっています。
課題
- 脱炭素化の実現には、サプライヤーと連携した削減施策が必要
- 従来の排出量の算定方法・ルールでは、企業の削減努力が反映できない
- サプライヤーの中には、データ共有によって、競合他社に情報が漏洩しないか懸念する声
解決
- Fujitsu Uvance オファリング「ESG Management Platform」を活用してデータ連携
- 国内外双方のルールに則ったシステムにより、様々な企業が参画可能
- 指定した連携先企業にのみ PCF最終値が公開される機能
効果
- サプライチェーンの CO2 排出量可視化へ前進
- 実データを使って分析やシミュレーションができるようになり、より具体的な施策の効果測定が可能に
小さなステップかもしれませんが、富士通のカーボンニュートラルにとって、またオファリングを提供する立場としても、よい一歩を踏みだすことができました
富士通株式会社 グローバルサプライチェーン本部
サプライチェーン基盤統括部
安島あい 氏
27%
当社グループに占める
サプライヤーによる原材料
調達などからの排出(Scope3 カテゴリ1 )の割合(2023年度)
- 業種: 製造業
- 場所: 日本
- https://global.fujitsu/ja-jp
サプライヤーと連携したCO2削減の必要性
富士通のバリューチェーンの CO2 排出量は、2023 年度で約 397 万トンです。この内、サプライヤーによる調達などからの排出(Scope3 カテゴリ1)は、約 27%を占めます。
つまり、脱炭素化を進めるためには、サプライヤーとの連携を強化する必要がありました。
実現課題のひとつに CO2 排出量の算定方法がありました。現状では多くの企業が、調達量や金額などに係数をかけて推計値を出す方法を採用しています。これに対して近年、製品単位で CO2 排出量を算出する「製品カーボンフットプリント」(Product Carbon Footprint; PCF)に関心が高まっています。
PCF は実績値を用いており、グローバルスタンダードとしてガイドラインが作られています。 企業の CO2 削減努力を正確に反映できることもあり、当社は、今後できる限り PCF データをやりとりしたいと考えています。
PCFデータ共有をサプライヤーに依頼
2024 年2月、プロジェクトをリードする富士通サプライチェーン基盤統括部の安島あいは、説明会で、協力を呼びかけるところから始めました。対象は、当社の情報通信製品などの部品やモジュールを供給するサプライヤー企業です。
依頼内容は大きく2つありました。① 製品単位の PCF 値の計算と共有、② サプライヤーへ構成部品を供給するさらに上流のサプライヤーの PCF入手と共有でした。
しかし国内では、すぐに共感いただけない会社もありました。
「興味はあるが人的リソースがない。計算が難しすぎる。そもそもデータがないと断られてしまうこともありました」と安島。
「データを集めてもらうには知識や人手が必要で、企業に負荷がかかるわけです。なぜこのデータが必要か。また、得られるメリットはなにか。共感いただくまで時間がかかるサプライヤーもありました」と、折衝を担当した花井恵は述べています。
1社1社ヒアリングし、各社が排出量をどこまで把握しているか、また上流の取引先の情報は入手できるか確認していきました。対話を重ね課題を検討するなかで取り組みの重要性を理解するサプライヤ―が増え、最終的に 12社の賛同を得ることができました。
国際・国内双方のルールに則った「ESG Management Platform」
サプライヤーの CO2 排出量データは、当社の SaaS Fujitsu Uvance オファリング 「ESG Management Platform」上で集約します。ESG Management Platform の強みは、「PACT」のデータ連携の技術仕様を実装し、相互接続試験に合格していることです。
PACTとは、国際経済団体 WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)がカーボンニュートラルを目指し様々な機関と構成する組織です。それに加え、ESG Management Platform は国内のサプライヤーが現状多く使う算出ルール(PCF が製品ベースで算出するのに対し「組織ベース」といわれる)にも則ることにしました。
これは国内ビジネスの実情に応じ、より多くの企業が使えるよう段階的に取り組みを広げるための措置でした。
(プロジェクトの詳しい内容について、PDF資料をダウンロードください)