ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)は、スーパーマーケットでレジに並ばずスマホで買い物ができるなど顧客に買い物の楽しさを提供しています。富士通のリテール向けAPI基盤「Flexible Commerce」を活用して、業態のデジタルシフトを加速していることがその背景にはあります。
課題
パーソナライゼーションが進む小売市場で機敏にサービスを開発する仕組みが必要であった
ソリューション
富士通のリテール向けAPI基盤「Flexible Commerce」を活用しバックエンドとフロントエンドを手間なく連携
導入効果
-
各種デジタルサービスの立ち上げ期間が半減
-
消費者のショッピング体験を変えるアプリ「Scan&Go Ignica *」をリリース
-
アジャイル開発によりサービスの機能強化を毎月実施
スマートフォンを新たなインフラにして、今までになかった業態を生み出していきます
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社デジタル本部部長デジタル開発担当 角野泰次(すみの・たいじ)
概要
2015年に設立されたユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)はマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東など関東圏のスーパーマーケットチェーン3社の統合により設立された共同持株会社。首都圏に加え千葉、埼玉、神奈川、茨城、栃木、群馬に521店舗を展開する。
加速する小売事業のデジタルシフト
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)は、レジに並ばずにスマートフォンで買い物ができるショッピングアプリを開発するなど、消費者向けの斬新なデジタルサービスを続々とリリースしています。同社は、「オンライン」と「オフライン」を互いに行き交う「相互方向」の動線を引く「OMO(Online Merges with Offline)」という考えの元にリテールDXを推進しています。
OMOを展開していくためには決済や認証などをつかさどる基幹システム(バックエンド)と、ユーザーのタッチポイントとなるアプリやサイネージなどのフロントエンドとの連携が鍵となります。しかしこれまでは、各種サービスを実現するうえで、両者を連携させる際の手間やコストが開発現場の大きな悩みとなっていました。
バックエンドとフロントエンドが自在に連携
この課題に対しUSMHは富士通のリテール向けAPI基盤「Flexible Commerce」を採用。クラウド上に構築されたバックエンドにAPIを通じてフロントエンドが短期間に繋がる環境を構築しました。従来は、販売チャネルごとにそれぞれ別のシステムがあり、新規サービスを投入するためには新たに連携の仕組みを作る必要がありました。新たな環境により開発担当者はフロントエンドに注力してサービスを開発できます。
スマートフォンで決済が完了する「Scan&Go Ignica *」、スマートフォンベースのネットスーパー「Online Delivery Ignica*」、無人店舗「オフィススマートショップ*」など、API基盤「Flexible Commerce」の導入以来、USMHは矢継ぎ早に新サービスをリリースしています。最近では、カスミが運営する新業態のスーパーマーケット「BLANDE」で、特別なクーポンを発行したり店内のラウンジに案内したりするロイヤリティ会員向けプログラムを開始しました。同店舗では、スマートフォンがユーザーとの有益な接点ということもあり、Scan&Go Ignica *の利用率が30%を超えるといいます。
また、基盤上に蓄積された購買データはお薦め商品の推奨精度向上など、店舗とユーザーの繋がり強化にも役立っています。今後はさらにデータを有効活用して、お薦め商品をクラスター分析の結果から自動で出したり、お薦めした商品が正しかったかを検証してフィードバックするループを自動で回したりなどの拡張も考えています。
アジャイル開発で今後も新業態を生み出す
一連のサービスに対して、USMHは基本的に毎月機能を追加しています。同社は「最小限の価値を生み出す機能ができた段階でリリースする」という「MVP(Minimum Variable Product)」の考えに基づいてアジャイル開発を行っていますが、それを支えているのがFlexible Commerceを要としたAPI基盤です。
アジャイル開発を行ううえでは、USMHと富士通との強固な連携もポイントです。両社の主要メンバーが定例会を実施し、迅速な意思決定を行いました。また定例会には実際の店舗を運営する事業会社にも参加してもらい、アジャイル開発に巻き込みました。「最初はアジャイル開発の効果をあまりよく理解していなかった事業会社の方々も、その成果を実感することで、最近ではプロジェクトをリードするまでに意識が変わっています」と角野泰次デジタル本部部長デジタル開発担当は変革の様子を語ります。
「Flexible Commerceの活用により新規サービスの立ち上げの期間が半減した」と話す角野氏。「スマートフォンはやがて、小売業のインフラとなるでしょう。これからも新規サービスの投入で、今までなかった業態を生み出していきます」と抱負を語り、多様な購買体験の実現を目指しています。さらに角野氏は、富士通との新しい協業の姿を見据えており、今後のUSMHのリテールDXを更に進めていく上で、新サービスの共創パートナーとして、富士通には先進技術の社内教育などテクノロジーのエキスパートとして幅広い期待を寄せています。
*:お客様のサービス名称です