株式会社SUBARU 様

量産工程の品質保証にAIを活用しものづくり変革を実現

SUBARU群馬製作所大泉工場はエンジン用カムシャフトの加工品質を検査なしに全品保証することを実現しました。富士通とともに開発した研削加工工程の品質を保証するAIモデルに、予測精度低下を防ぐ仕組みを盛り込み、量産工程での本格稼働に至りました。

課題

IoTやAIを活用したスマート工場化が進む中、加工工程においても品質保証技術をより高める必要があった

ソリューション

高精度のAIモデルとAIモデルのライフサイクルを管理するシステムによりエンジン用カムシャフトの研削加工工程で全品の品質を保証

導入効果

  • 品質監視用AIモデルで量産部品の加工品質を全品確保
  • 研削加工における部材・部品の無駄や生産時間のロスの解消
  • 全社に展開できる不良品を出さないものづくりの仕組みを構築
現物を測らなくても全数造った瞬間に品質の良否判定ができる技術です

株式会社SUBARU 製造本部 群馬製作所 電動車両生産技術部
DX主査兼生産技術統括部DX企画主査 大庭卓(おおば・すぐる)

概要

SUBARU(旧富士重工業)は、自動車と航空宇宙産業に事業を展開する日本の製造大手。同社の製造する自動車は悪路での走行性能に優れ、世界中に多くの熱狂的なファンを持つ。大泉工場は同社群馬製作所の生産拠点。主に自動車用のエンジンとトランスミッションを生産する。

中期経営ビジョンに基づきAIモデルを導入

SUBARUは、2018年7月に新中期経営ビジョン「STEP」を発表しました。STEPにおいては「品質」を取り組みの一丁目一番地に定め、ものづくりの品質改革を実行しています。群馬製作所では STEPに基づき、IoTやAIなどデジタル技術を用いた生産現場の改革を積極的に推進しています。

この取り組みの一環として、部品の製造工程において造った瞬間に良否判定をする技術の構築を目指し、まずはエンジンの重要部品であるカムシャフトをターゲットとすることを決めました。具体的には、研削工程の品質保証の向上に向け、研削加工機の主軸動力値や振動といったデータから製造品質の良否を判定するAIモデルの導入を検討したのです。

導入にあたっては、その技術に高い実績とノウハウをもつ富士通をテクノロジーパートナーとして、ともに実証実験を進めました。「単なる商品の売り込みではなく『人』と『技術』を介した他にはない協業の提案があった」(群馬製作所電動車両生産技術部の大庭卓主査)。単に製品を導入するのではなく、何が何でもAIの導入によって製造現場の課題を解決したいという富士通の思いが、選定の1つの理由だといいます。富士通のエンジニアが工場に常駐し、常に膝をつき合わせながら課題などを共有し、両社は協業を続けました。

予測精度をリアルタイムで照合監視

実験の結果、AIモデルが高精度に加工品質を予測できることが確認できました。一方、生産設備の経年劣化や環境変化によりAIモデルの精度が低下することがわかり、量産ラインへ実装するためには、この問題へ対応することが求められました。

この問題に対処するためSUBARU と富士通は、加工現場のエッジデバイスに点在しているさまざまなAIモデルのライフサイクルを、一元的に管理する仕組みを導入しました。導入したのは富士通の製造業向けソリューション「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA 現場品質AI 運用管理パッケージ(略称COLMINA現場品質AI)」。AIモデルは、全カムシャフトの研削加工においてセンシングデータから品質状態の良否を判定します。一方、COLMINA 現場品質AIは、AIモデルの推論結果と部品の品質検査結果をリアルタイムで照合し、AIモデルの予測精度を常に監視。劣化が検知された際には再学習などチューニングの必要性を知らせることで、AIモデルの精度低下を未然に防ぐことを可能としました。

量産ラインの本格稼働を足掛かりにものづくり変革を加速

COLMINA現場品質AIが量産ラインにおいて本格稼働したことで、大泉工場のカムシャフトの品質保証はかつてなく確かなものになっています。全数の良否を判断しているため、従来の抜き取り検査を主体とした製造品質検査と比較し品質保証レベルは向上しました。また、製造と評価を同時に実施するため、製造の時点で悪いものを取り除くことができます。後工程には悪影響を与えないため、部材や部品、作業時間のロスを大きく削減できる可能性があります。

SUBARUのものづくりに関するノウハウと富士通のAIに関するノウハウが融合して実現したシステムに対して、大庭主査は「現物を測らなくても全数造った瞬間に良否判定ができる技術」と評価します。量産ラインでの本格的稼働実績を足掛かりに、今後はカムシャフト以外の部品、そして群馬製作所の他の生産拠点へと導入を拡大していきたいと大庭主査は抱負を語ります。「データ活用によって従来とは違う高次元の品質保証方法を構築し、品質とものづくりで競争優位となることを狙っています。そのために、今後も富士通さんとの共創を通じてものづくり変革をしていきたいです。」

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